Phinloda のいつか聴いた曲

Camel - Fritha

もう一曲 Camel から選ぼうとして迷ったのだが、Camel を語るのならやはりこれは外せないだろうと思ったので、The Snow Goose からFrithaを紹介する。ご覧になれば分かるように歌詞がない。歌詞がないのに紹介できるのかと思ったけどなぜかリンクがあるので助かった。

このアルバムはインスタルメンタル、歌詞はない。原作の小説はポール・ギャリコ氏によるもので、いくら音楽の表現力が素晴らしいといっても、メロディだけから想像するのは限界がある。この曲を理解したいのなら小説を読んでおくことは必須だ。ただし、感じたいだけなら、それは必要ない。小説抜きで聴いてから読んでみるというのもアリだろう。

Side1 は The Great Marsh から Rhayader Alone まで。Side2 は Flight of the Snow Goose から The Great Marsh (Reprise) までがだいたい曲の切れ目なく繋がっている。Fritha はSide1 に入っている9曲のうち5番目の曲。確か Frith というのが女の子の名前だったと思うが、昔読んだペーパーバックが手元にないのでよく分からなくなってしまった。side2の5番目の曲、Fritha Alone は、Fritha でシンセが演奏しているモチーフをピアノアレンジしたメロディになっている。

Fritha という曲は、アコースティックギターのバッキングにシンセサイザーが主旋律を担当する。直前の Sanctuary がアコースティックギターの伴奏にエレキギターがソロで被せるという単純な構成なので、そこからシーンが切り替わってヒロイン登場、のようなイメージだ。この2曲はリズムパートがない。Camel はプログレッシブでクリアなドラムも魅力の一つだが、それ抜きの珍しい曲なのである。

この次の曲のタイトルが The Snow Goose、鳥の飛んでいる様子が目に浮かぶようなメロディだが、昔、コンピュータ音楽を勉強していた頃に The Snow Goose を分析していて頭を抱えたことがある。コードはうろ覚えだが、確か Em7 と F#m7 のコード進行のところがあって、そこのメロディが全く同じだったからだ。言葉では説明しにくいが、最初のパートの最後のギターソロのメロディのところである。Em7 と F#m7 というのは共通音が殆どない。一般論としては、Em7にあわせた音はF#m7に合わないし、F#m7にあわせたらEmに合わない。だから、普通はこのコード進行なら、メロディがそれぞれのコードに合わせた別のものになるのだが、この曲はそこに全く同じメロディを被せているので、どう解釈していいのか分からなかった訳だ。

一般に音楽を作るときは、聴かせたいパートは絞られている。主旋律を演奏する楽器が一つあって、他はあまり凝ったことをしない。聴く人は一度にあまりたくさんのメロディに集中できないからである。このアルバムは、もちろんその鉄則は守られているとして、よく聴いてみると、その他のパートの凝り方が凄い。細部に至るまで細かく計算されたようなメロディ、リズムである。例えばベースだけに注目して聴いてみるとか、ドラムに集中してみるとか、そういう聴き方をするとよく分かる。

※このページは Yahoo!ブログに投稿された内容を転載・編集したものです。オリジナルの URL は https://blogs.yahoo.co.jp/phinloda/25057081.html です。

2010-06-12 11:30:03 JST

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