井上陽水さんの歌からもう一曲選ぶとすればこれしかないと思ったのが、人生が二度あれば。 選びたい曲はたくさんあるのだが、この曲は異色だと思う。だから紹介しておきたい。
異色といってもベースにあるのは同じテーマである。この時代に今のような「ゆとり」という言葉はなかった。人々はがむしゃらに明日に向かって走り、そこそこの成果は得られた。しかし、今思うと、人々が目指したゴールは何か違っていたのではないかと思う。
曲としては正統派の和風フォークソング。アメリカのそれに比べると政治的なメッセージがあるわけでもなく、直接何かを訴えかけるのでもないから、じゃあどうしろというんだ、というような煮え切らない感情が残りそうで、それが最後の「人生が二度あれば」というリフレインの強烈な歌声で消されてしまう。
もちろん人生は二度ないわけだから。
知恵袋に「大金持ちが仕事をするのはなぜか」という質問が出ていた。働くのは金を稼ぐため、食うためだというのなら、働かなくてもお金を持っている大金持ちがなぜ働くのか、というのだ。人生の意味が分からないとそういった疑問が出てくるのは当たり前のことだ。もちろん、食うための人生というのも悪くない。生きているのは食べるためだ、腹をすかせないためだ、というのも無意味ではない。逆に、人生は食うためにあるのではないという人に、じゃあ食えなくてもいいのかというと、言葉に詰まる人の方が多いだろう。人生が食うためにあるのではなくても、食わないと人生が終わってしまうという葛藤がある。
井上陽水さんといえば、CMの「くう、ねる、あそぶ」というキャッチフレーズも印象に残っているのだが、できるなら、ここに出てくる父と母に、人生はどうだったのかというのを訊いてみたい。びっくりするような返事が来そうな気がするのだ。
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です。