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フィンローダのあっぱれご意見番 第105回「真似てはいけない系」

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2001年、各地の成人式で市長がキレる事件が発生した。

 

※ 事件は毎年、相変わらずあるが、 この年のようにキレたというのは珍しい。

考えてみれば当たり前なのだが、 成人式を税金で開催しているというのは知らなかった。 今年はTVの報道も多かったせいか、 こんな状況なら成人式を止めてしまえという声もあるようだ。 対症療法的だが、 成人式が荒廃して、 式典としての荘厳さも喪失しているというなら、 それも一案だと思う。

ただ、話はそう簡単ではないようだ。 例えば、呉服業界が大反対しているという。

そう言われてみれば、成人式を廃止すれば晴れ着の需要は激減しそうである。 成人式は、実は成人だけのための式典ではなく、 呉服業界の存続のためのセレモニーでもあったのだ。 それなら、税金を使うのではなく、 利益を得ている呉服業界が主催して成人式を行えばよさそうなものだが、 もちろん、呉服業界には既にその余力はないのである。

とはいっても、原則として、ニーズのある業界だけが生き延びるのが経済の基本である。 成人式が廃止されて呉服業界が消滅するのなら、 それは時代の流れとしか言いようがない。 ただ、成人式が呉服業界のニーズになっているという事実からイメージすれば、 もう一歩進んで、成人式をより大きなビジネスにする方法が何かあるのではないかとも思えるのだが。

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例年のことらしいが、 成人式には市長の挨拶というものがあるようだ。 今年は、聴衆が私語を止めなかったので市長が挨拶をドタキャンして退場してしまったり、 壇上から「やかましい」と一喝するとか、その種のキレ者市長が目立った。 報道各社は競って 「新成人のマナーがなってない」という方向で論じているのだが、 そうなると逆に気になってしまう。 これは本当にマナーの問題なのだろうか?

  

成人式に「帰れ」のヤジが飛ぶという。 これは現象としては分かりやすい。 挨拶を聞くのが耐えられない新成人がいたという事実を示しているのだ。 もし、成人式が、市長挨拶がないと成立しない式典だというのなら、 聞く側は我慢するしかないだろう。 参加者を一堂に集めて、聞きたい話だろうが聞きたくも無い話だろうが、 強制的に聞かせる。 セレモニーとはそういうものなのかもしれない。

 

※ 私は成人式に出なかった。 今思うと、こういうのは出ておいた方がいい。 話のタネになるという理由だけでも、出る価値はある。

ただ、成人式にもその必要があるのか、という疑問はある。 市長挨拶がなくても成人式は成立するような気がするのだ。 もちろん、一生に一度の機会なのだから、市長挨拶を聞きたい人もいると思う。 だからといって、聞きたくない人も我慢しろというならば、 極論すれば、それは時代錯誤である。 時代は急激にIT化している。 今はもう、数多くの情報の中から、 受け手が好みのもの、必要なものを選択するという時代ではないのか。 聞きたい人だけ聞けるようにセッティングする方法は、いくらでもある。 例えば、早い話、挨拶は聞きたい人だけ入場すればよい。 ただ、それをやってしまうと、 市長挨拶に誰も来ないじゃないか、と反論(?)されそうな気がするけど。

成人式が2次会の集合場所としての価値しかないと報じたメディアもあった。 いい視点をしている。 いろいろなイベントをプランした自治体もあるらしい。 それこそ成人式でやる必要があるのか疑問ではあるが、 参加者のニーズを満たすという意味では正道だ。

ある成人式ではコンサートの計画をたて、 参加したい人はあらかじめ予約することにした。 希望者は1700名だから、まずまずの人数が集まったかと思ったら、 当日、千名近くが来なかったという。 どうしてそういう結果になったのだろうか? 自ら予約したはずなのに、半分以上が来ないというのは、 かなりの異常事態である。

まあいろいろあるけど、 とにかく、まとめるとこういうことだと思う。 結論としては、今のような成人式、いらないでしょ。

じゃあどんなのだと出たくなるかというと、 私は20歳じゃないし、知らないし、よく分からない。 でもまあ例えばだな、成人式をウルトラクイズ形式にするというのはどうだ? 全国から都道府県別にチーム組ませて戦わせて、 最後に武道館で決勝大会でもやって、 優勝チームは賞金総額1千万円とか出すと。 そんな予算出ない、ってことは絶対ない。 税金なんか1円も使わなくても、絶対にTV局が乗ってくるはずだから。

もう一つ重要なのが、インタラクティブ性だと思う。 デジタルBS放送が昨年末から始まったが、 そのウリの一つがインタラクティブという性質である。 視聴者も番組に参加できるというのである。 もっとも、現実はそう甘いものではないと、 関係者が思い知っているような状況だという噂もあるが。

そもそも、世界の成人式というか、 その種の通過儀礼を考えてみると、 成人になる本人が何かしなければならない、 というものが結構ある。 バンジージャンプって、そういえばそういうものだっけ?

市長挨拶も、多数を相手に通じることを言うという条件で縛られてしまうと、 どうしても偏りがなく無難な挨拶にならざるを得ない。 無難というのは、うがった見方をすれば、全然面白くないということだ。 それよりは、新成人の一人一人に、まず質問してもらい、それを直接市長が答える。 市長さんは大変ですけど。 インターネット使えば、できるような気がする。 市によっては、何万人も新成人がいるかもしれないから、こりゃ大変だ、とか思うでしょう。 多分、実はそうではないと思う。 こういう場合、質問はものすごく重複するからだ。 例えば、「市長の成人の頃は何していたか」とか、「かばんの中を見せてください」とか。 優等生系だと「新成人にどのような印象を持っているか」や、 「財政を立て直す具体的な政策はありますか」てな所か。 そういう、共通した質問は、まとめて回答すればいい。

そして、市長をギャフン(死語?)と言わせた人だけ成人として認められるとか、 そういうセレモニーにするというのはどうだ。

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現状が何かヘンな場合、 特に重要なのは、なぜそうなったのかを知ることである。 ヤジが飛んだりクラッカーが鳴らされる理由は、おそらくとても簡単なことだ。 つまり、はっきり言って、現状の成人式は、新成人にとって「つまらない」のではないか。 成人式に行けばタダでメシが食えるとか、 中学や高校の友人に会えるとか、そういうメリットだけで参加しているのではなのか? 成人式が成人式であるという理由で「ぜひ参加したい」という新成人、一体どれ位いたのだろう。 そして、新成人は本当はもっと目立たないのに、成人式では何もやらせてもらえないのではないか。

私は成人式の挨拶を聞いたことがないが、想像はできる。 おそらく、かなり多くの成人式の挨拶で 「新たに成人になるにあたって、一社会人としての自覚と責任を持って以下省略」 というような趣旨のスピーチなのではないか。 これはもちろん正論だ。 ただ、それを裏から見れば、 成人式に集まった人達は、 それまでは「一社会人としての自覚と責任」を持つ必要がない存在だったことを意味する。 じゃあそのような新成人を作った責任は誰にあるのか。 そのような新成人を育てた人にあるのだろう。 もしそうじゃないというのなら、このスピーチが間違っている。

さて、プログラミングで重要なのは、いい手本を真似るということだ。 マナーもおそらく同様だろう。 日本の社会における一般常識として、壇上で誰か話をしている時、聞く人はどういう態度を取るべきか。 若者よ、いい手本を真似るのだ。

さて、手本って何がいいですかね。 やはり、これしかないでしょう、国会だろ。 日本国民が選んだ代表がやっていることだから、それはもう絶対間違いないですね。 最近はインターネットでライブやっているし、いいじゃないですか。 国会議員という偉い人のお手本を参考にすれば、 日本では、他人が話をしている時にヤジを飛ばすのがむしろマナーだということは、誰が見ても明らかですね。

蛇足だが、じゃあ来年の成人式は、 クラッカーじゃなくて水を入れたコップを用意しようというのはダメだ。 既にその流行は終わっている。 やるなら今年だった。

  

汚職事件とか見てしまうと、もしかして国会は特殊かもしれないと思ったりする。 じゃあ、TV番組で視聴者に支持されていそうなものを真似るというのはどうか。 討論番組として定番なのは何だろう。 朝まで生テレビとか。 新成人の皆さんなら「ここがヘンだよ日本人」の方が面白いかもしれない。 昨年は、青少年に悪影響を与える番組がいくつか潰されたのだが、 これらの番組は何も悪くないようだし、その討議の様子とかは、十分お手本にしていいでしょう。

 

※ いずれも、人が発言していようが大声で妨害し、 言いたいことは言う、人の話は聞かない、みたいなノリの番組。 違ったかもしれないが、私はそう観ていた。 まあそこが面白いのですけどね。

§

さらに、危機管理もなってない。 高松市では、挨拶中に市長に向かってクラッカーを鳴らした新成人が、 後日逮捕されたというのだ。 これは市長がどう考えても甘すぎる。 最近の若者の心理を全然わかっていない。 それでよく挨拶の場に立てたものだと思う。

  

この市長さん、 「人が死ぬのを見たかった」という理由で爆弾をビデオ店に投げ込んだり、 「目立ちたかった」という理由でバスジャックしたりした若者の事件を知らないのだろうか? たまたま今回はクラッカーだから大したことはなかったけど、 散弾銃で撃たれていたら一体どう始末を付けたのか知りたいものである。

 

※ この頃、その種の事件があった。

私がそこの市長だったら、当然SPかガードマンに武装させて警備させるし、 何かこちらに向けたり(それは銃かもしれない)投げようとしたら、 即座に発砲するように指示しておく。 被害は最小限にする必要があるから、 余計かもしれないが、場合によっては射殺しても構わないと念を押しておきたい。 今はそういう時代なのである。

 

※ という程死者はでていない。 日本は平和なのだ。

告訴にあたっては、「告訴しないと行為を容認したことになる」 という訳のわからないコメントを発表していた。 当日クラッカーを鳴らされ、物を投げられた時には現行犯逮捕しないで見逃しておいて、 市民の反響とかを見てから後になって告訴するというのだ。 それって、まさに当日は行為を認めたことになっているような気がするのである。

§

  

期末試験のC言語、Perlを担当することになったのだが、 年末年始がこればっかりだった。 C言語はともかく、 Perlって試験作るというレベルというよりどちらかといえば問題解く側なので、 かなりヤバいんじゃないかとは思ったが。 正直に書くと、まだ完璧に理解したとは思っていないのが、 型グロブの使い方と、mapと、リファレンスのあたりだが、 ちなみに理解してなくても使っているから怖い。

 

※ Cマガジンにそういう特集があった。

この企画の話が出た時にまず考えたのは、

C言語を使ってプログラムを書け (100点)

という問題である。

  

ただ、これをやったら次から原稿の依頼が来なくなるので、 最後の手段に取っておくことにして、 適当にQ&Aの原稿とか引っ張り出してきて、 これはあった方がいいだろ、というのを選んでみた。 後から考えたら、もっと面白い問題もあったかな、という感じだが、 大々的に@niftyとかで募集してみればよかったのかもしれない。

 

※ @nifty: フォーラムというのがあって、 プログラマーが集まるプログラマーズフォーラムというのもあった。 昔のことだ。

§

問題を作成する時にちょっと困ったのは、どう書けばいいかということである。 ワープロでレイアウトまで考えて書くという手はあるかもしれないが、 面倒だし、レイアウトがそのまま完成原稿になるわけではないから、ある意味無駄だ。 実は、問題文は、fig.1 のようなテキストになっていたのである。

---- fig.1 ----

<Q>
LIST#1# のプログラムを実行したら画面に abc と表示されました。
【1】に入れるものとして、適切なものを選択肢から選びなさい。

<list>
#include <stdio.h>

int main(void)
{
    char str[10];

    【1】
    printf("%s\n", str);

    return 0;
}

<A1>
1. str = "abc";
2. *str = "abc";
3. strcpy(str, "abc");
4. memcpy(str, "abc");
</A2>

<ANS>
3. strcpy(str, "abc");

<COMMENT>
printf が表示するのは配列strに格納されている文字列です。
…

---- fig.1 end ----

これを perl のスクリプトに通すと、 LIST#1# という文字列は、適切な番号に割り当てられて、 <list>と</list>で閉じた範囲はリストとして解釈…あれれ、 閉じてないですがな。 これはまた…。

あと、<A\d>と<dd/A\d>で囲んだ所が解答の選択肢などになっているのが、 何となくHTML風だけど、実は極めてデタラメな書き方だ。 「<ddA」に続く数字は、それが何番目の小設問かを意味しているのに、 「<dd/A」に続く数字は、なぜかその設問の点数を意味しているのである。

特に困ったのが、点数の割り振りだった。 こういう時は50問作って全部2点にするのが基本だと切実に思った。 しかし、まだ手作業で合計点の確認をするほどボケてはいないから、 点数もperlにチェックしてもらったのである。 点数を割り振るまでは「</A>」には数字が含まれていなかった。 後から成り行きで追加したのだ。 成り行きでこういう仕様を作ってしまうから、後で困る。 ただ、実際、その場では特に困らないのである。

現実というのは、しばしば他人には真似して欲しくないような状況になるものらしい。

  

(C MAGAZINE 2001年3月号掲載)
内容は雑誌に掲載されたものと異なることがあります。

修正情報:
2006-03-11 裏ページに転載。

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