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フィンローダのあっぱれご意見番 第173回「秘密のプロファイル」

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プロフィールサービスがはやっている。 ブログのサイドバー等に貼り付けることができるものだ。 クリックしたらどこに行くのか知らないが、 特に若い人、中学生や高校生のブログでは大流行らしい。

コトノハのように、 ネット上で○×を付けて、 意見を集めるようなサービスもある。 Wii でもそのようなゲームがあるらしい。

この種の情報コミュニティを見ていると、 誰でも気付くことがある。 確かに○、×に分かれる。 その結果は非常に偏ることもあれば、 意外と意見が分かれたりすることもある。 あえて他の人と違ったことを書こうという人がいるので、 完全にどちらかに偏るという場合も、 逆の意見の人が必ずいたりして面白い。

とはいっても、 書かれたコメントが均一なのである。 似たり寄ったりのコメントが、多数集まるのだ。

これはある意味当たり前の話だ。 大多数の人間は、同じように育てられ、 社会という同じ環境で均一な情報を与えられて育つ。 もちろん、そこに個性が介在する余地は非常に大きくあるわけだが、 社会というコミュニティが個々の人の間のコミュニケーションを前提とする以上、 非常に強力な共通基盤が必須なのである。 それは言語であったり、風習であったりするのだが、 そのような共通基盤の中で育つと、似たような反応を強いるような育ち方をするのだ。

例えば、日本で育った人は「戦争はよくない」と考えている人が大半だと思う。 これは実際にそのようなアンケートを行えば強烈に分かるから議論の余地もない。 では、なぜ戦争はよくないのか、という所に踏み込んでいくと、 だんだんしどろもどろになってしまう。 なぜなら、戦争はよくないという情報は、 理由と強く関連付けられた情報として経験的に身に付いたものではないからだ。 机上の知識として(日本人の多くは戦争に参加したことがない)頭の中にインプットされたからである。

同じように「人を騙すのはよくない」「お年寄りは大切にしよう」「人のいやがることをしてはいけない」など。 もちろん、このような社会常識は、 誰もが似たような反応をして当然のものだし、 むしろそうあるべきものなのだ。 ただ、そうでなくてもいいものまでも、共通パターンが生まれてしまうのが社会的な現象というものである。

今だとどうなのか知らないが、 私が子供の頃は、 漫画を読んではいけないとか、TVを(長時間)見てはいけない、というようなことをよく言われた。 漫画じゃなく本を読めというのだ。 TVを見てはいけないというのは、目が悪くなるからというのだが、 では、もし目が悪くならないとしたら、TVをいくらでも見ていいのか、 というと、そういう雰囲気でもなかった記憶がある。

多分、最近その種の子供向け制限で一番多いのは「ゲームをしてはいけません」だろう。 なぜゲームをしてはいけないかというと、 ゲームがいけないというよりも、 むしろ、 ゲームに熱中してしまうと、勉強する時間がなくなってしまうのがいけないのだ。 もともと、高校までなら、 勉強というのも、ゲームのようなものだ。 ドラゴン桜というコミックがある。 成績の悪い生徒を短期間で特訓して東大に合格させるというストーリーなのだが、 これを読むと、 入試対策なんてのは、典型的なゲームであることが分かる。 ハイスコアを狙ってテストを受け、ランク入りした人だけが合格通知をもらえる、 そういうシステムのゲームなのだ。 もちろん、基礎的な学力、知識のある人が有利なことも間違いないのだが、 ゲームだからいろいろ裏技とかあって、 そのあたりうまく駆使できる人が勝てるようになっている。

子供にゲームはさせてはいけないか、 というのはあと20年もすればちょっと変わってくるのではないか。

§

個人の思考パターンが非常に多くの人と重なっている、 という一つの事実があるとしよう。 もう一つ重要な事実がある。 わずかのブレも、多数のデータが集まれば、 個人を完全に特定できるような強烈な情報になる。

昔、二十の扉という番組があった。 というか、あったそうだ。 私はあまりその番組の記憶がないのである。 この番組は、 20個のヒントで、あるモノが何かを当てるというクイズ番組である。 最初の質問は「それは動物ですか?」のような決まった質問だったと思う。 それに対して「はい」「いいえ」で回答する。 この手順で絞り込んで、20回繰り返すまでに何かを当てれば勝ちだ。 単純計算しよう。 Yes/No の質問を20回繰り返せば、 2の20乗の末端を持つツリーが出来上がる。 2の20乗は約 100万だから、100万通りのモノが識別できる訳だ。 蛇足だが、2の10乗が1024、つまり約1000ということで、 20乗は100万位だと分かるのである。 概算のコツだ。

では、100個の質問に答えたらどうなのか。 単なる Yes/No だけでも、2の100乗。 桁違いどころではない。 もちろん、殆どの人は、殆どの質問に対して同じような反応をする。 このツリーは非常に偏ったものになるはすだ。 しかし、ちょっとずつ違っているところがあれば、識別するには十分だろう。 20個の質問だと理論上は100万通りだが、 実際は1万パターン程度とか、そういう分類状態になるかもしれない。 これが、100個も質問が重なったら、 完全に分離できてしまうだけの情報が集まるかもしれない。 プロファイリングに使えるのである。

  

オンラインの公開アンケートだとか、 バトンだとか、 実名や住所が出ていなければ、誰だかわからない。 ということで安心して、細かいことまで回答してしまう。 これが他のデータとリンクしたらどうなるか。 地域情報を絞るのは割と簡単である。 飲食店、レンタルショップ、ブティック、映画館などの話題が出てきたら、 それらの店の場所は分かる。 その近くに該当者が住んでいる可能性は高い。 新宿のケンタッキーで毎日食べているという人なら、 東京、しかも新宿から電車で通える範囲内に住んでいるだろう。

 

※ バトンというのは、 あるテーマに関していくつか質問を集めておき、それに回答するアンケート。 次に答える人を指名するのでバトンと呼ばれている。

そのようにして集めた個人属性は何に使えるのか? もちろん、ビジネス、マーケッティングに使える。 その人が何に興味を持っているかが分かれば、 それを紹介したら買ってくれる可能性が高くなる。 Amazon などの大規模複合Eコマースサイトが、 購買者の購買履歴を保存して、集計することで、 次に何を売ればいいかを推測している。 基本である。 Amazon は、その人が過去に何を買ったか、 という情報を元にして分析できる。 これが大規模コマースサイトの強みである。 大規模な店舗と個人情報を持っていなければ、 そのような分析はできないのだ。

できない? 今では、個人でブログを簡単に開き、 SNS に入会してコミュニティに参加している。 そこにはなかなか実名が出てこないが、 この種の広告・宣伝系のセールスにはお客様の名前は必要ない。 お客様が何を目の前にしたら買いたくなるのか、 ただそれだけが重要なのである。

バトンやプロフィール、 eコマースサイトにおいて最適化した顧客アプローチを実現するために、 誰かが仕組んだシナリオなのかもしれない。 まあでもお互いハッピーなら、いいではありませんか。多分。

  

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