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フィンローダのあっぱれご意見番 第114回「想像と現実」

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「ファイナルファンタジー」が映画化されたというので、 見に行こうと思ったら、 Webの掲示板には酷評が多いので迷っているうちに、 早々と打ち切りになってしまった。 スクウェアはこの映画で130億円の赤字を出したという噂なのだが、 どのように収支の読みを外したら1作だけで130億円も赤字を出せるのだろうか、 という所が魔法だと思った。 RPGをプレイするコツの一つは、持ち金に応じた計画的な装備である。 この映画、あまりRPG慣れしていない人が作成してしまったのだろうか。

 

※ スクウェア: ファイナルファンタジーを製作したメーカー。 2003年4月1日、 Enix と合併し、 SQUARE ENIX という会社になった。

一般に映画の興行収入がどの程度あるのかというと、 「千と千尋の神隠し」が邦画史上最大のヒットで、記録を更新したそうである。 実はこちらの映画は何となく見に行った。 かなり余裕をみて映画館に行ったつもりなのに、 既に長蛇の列。 待っている間にコミックを一冊読んでしまった。 この時に待っている人達の層が意外だった。 特にこのアニメの場合、 比較的子供連れが多いのではないかと思ったのだが、 私が行った時に多かったのは子供連れじゃなくて大人のアベックとかグループだった。

見に行ったのだから、この映画の感想を何か書くべきだろうと思うのだが、 個人的には「何となく面白かった」としか言いようがない。 物凄く感動したわけでもなく、笑ったわけでもなく、 何かよく分からないのだが、とりあえず面白いのではないか、みたいな。

ではファイナルファンタジーはどうか。 見てないのだから面白いかどうか全然分からないのだが、 掲示板で見た酷評によれば、感動がないとか、CGでやる意味が分からないとか、 シナリオがB級以下だとか、凄い感想があった。 確かに、 オールCGでこれだけの画像を作ったのは凄いと思うのだが、 映画を見に来る人達は、そういう所を見たいのではないらしい。

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IT関連企業の業績が悪化していて、 閉鎖されるWebストアもあるそうだが、 全滅かというと実はそうでもないようだ。 少数精鋭の生き残り組は確かに存在する。 IT系のニーズが消滅することはあり得ないから、これは当然である。 例えば、オークションサイト、 実は私自身は使ったことがないのだが。 オークションサイトは成功しているといわれている。 また、こちらは社会的問題にもなっているようだが、出会い系サイト。 これらのサイトの共通点は、 不特定多数から共通の関心を持った相手を絞り込むという特徴である。 このアプローチは母集団の数が相当大きくなければうまく機能しないので、 インターネットにベストマッチする分野になっているのである。

広告メディアとしてはどうだろう?  Webをビジネスに使おうとした人たちは、 まずバナー広告のような用途を考えたみたいだが、 バナー広告はどうも実際チャチなものが多い。 バナーのサイズに制限があったりして仕方ないのかもしれないが、 バナー広告で何か長期記憶に残っているものがあるかというと、 私の場合、そういったものがまるでないのだ。 しかし、TVのCMで記憶に残っているものなら、いくらでも思いつく。 もう一度見たいというTVのCMはあっても、バナー広告はない。

もちろん、 バナー広告の威力は、 それをクリックすればメーカーのサイトにジャンプするところにある。 インターネットは やはり双方向性を活かした使い方をしないと意味がない。 TVで映画の宣伝を見ていると、どれも絶賛、全米No.1ヒット、 とかいうキャッチフレーズで溢れている。 不評だというようなCMがあるわけがない。 これに対して、Webの掲示板の評判、これは情報の質が違うので面白い。 そこに書き込む人達は、映画関係者ではない。 利害関係がないから、自由に好きなことを書けるし、 それを見る人もそのつもりで解釈する。

メーカーのサイトも 最近は顧客からのアプローチを活かした使い方をしようと努力しているようだが、 ツメが甘いと感じることが結構ある。 例えば、ソニーは Sony Styleというサイトを立ち上げている。 このサイトでは、 インターネットという武器を使って、 ソニー製品の顧客を対象としたビジネス展開を積極的に行っている。 私の場合、VAIO SR9/K をインターネットで注文して買ったから、 その時の情報が登録されているのだろう、 VAIOの新製品が出たりすると必ずメールで知らせてくれる。

さて、最近新しいVAIOノートを買った。 SR9M/Kというモデルである。 これをどうやって購入したかというのがネタなのだが、 もちろん最初はSony Style のサイトをアクセスした。 前に購入したことがあるのだから、当然の選択である。 ところが、ここで問題が発生した。 さあ購入しようという段階で、 「ソニースタイルのログインIDとパスワードを入力してください。」 と画面に表示されたのである。

ログインIDとパスワード?

SR9/Kを買ったのだからSony Styleには入会しているはずだし、 実際DMも来ているのだが、 これがどうしても思い出せない。 あれこれ思いついたのを入れてみてもダメ。 で、結局どうしたかというと、 ここで購入するのを諦めて、新宿まで出かけてパソコン店で買ってしまったのだ。

ソニーにしてみれば、直販であれ小売店経由であれ、 1台売れたのだからいいのかもしれないが、 eコマースの事例としてはお粗末な結果である。 もしこれが初回の購入だったら、間違いなくインターネットで買っていたはずで、 何かが間違っていることは間違いない。 もしかしたら新規購入の手続きを最初からやり直せばいいだけの話かもしれないが、 入会しているはずなのに、もう一度入会手続きをするという所に どうも抵抗があったのだ。 この失敗の原因が、顧客側がIDとパスワードを忘れたというところにあるのが凄い。 責任は全て顧客側になあるのだ。 しかし、現実ってそういうものである。 ソニーの担当者、これを読んでいたらズッコケているかもしれない。

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C言語Q&Aのページが野放し状態なのだが、 あの寂れたページにどういう訳かアクセスがあるし、 質問してくる人もいる。 もっとも、最近は殆ど回答していない。 というか、殆どの質問がC言語の質問ではないので回答しようがないのだ。 例えば、「cl.exe の起動エラー」と画面に表示されたが、どうすればよいのか、 というような質問があった。 珍しいことに、この質問にはメールで回答したのだが、 なにしろこちらは cl.exe が何なのか分からないという状況なので、 基本的にどうしようもないのである。 ではどうしたかというと、まず「cl.exeとは何か」をWebで調べるのである。 全てはそこから始まるのだ。

 

※ 冗談のような本当の話で、 MSC とか VC++ とか使ったことなかったから…。

だいたい cl.exe という名前が不思議である。 cで始まるからC言語系のプログラム(って何?)だという想像は可能かもしれないが、 lって何なのだ? リンカのL…なわけないか。 ラージモデルとか。 発想が古すぎるか。 cs.exe とかあったりして。 既に歴史的考察になり下がっているのだが、 これがVC++のコマンドラインコンパイラだということが分かると、あとは簡単である。 「インストールし直してはどうでしょうか?」というのが回答になるのだ。 ハードウェアなら「電源は入っていますか」、 ソフトウェアなら「再インストールしてください」 というのが現実的に意味のある回答なのである。 ただし、Windows 2000 を使っている感触としては、 この「再インストール」というのが生半可なものではなく難しい。 一度何か古いバージョンのドライバでも入ろうものなら、 もう永遠にその呪いは続くのである。 レジストリに細工すればいいのは知っているけど、 その領域になると、もはや魔法というか、禁断の領域なわけでなかなか手が出せないものである。

 

※ 再インストールしたらネットワークが使えなくなるというのが定番。 ネットワークドライバを別途インストールする必要があるのだ。

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もう一つ別の質問。 これは珍しく正統派の質問で、 例えば構造体へのポインタをintにキャストして、 それを元の型へのポインタにキャストした場合、値は保証されるのか、 というものだ。

ANSI 以降なら (void *) にキャストするのが普通だと思うが、 それ以前のコードでは int にキャストするのも割とポピュラーなやり方だったと思う。 この質問への回答は、 「ポインタは、汎整数型に型変換してよい。 要求される整数の長さ及び結果は、処理系定義とする。」 という規格になっているので、処理系定義ということになる。

  

ただ、この問題はもう少し深いものだったようである。 質問者の目標としては、 このポインタをセーブしてロードすることを考えていたらしい。 つまり、Java的にはシリアライズの問題に対応した質問である。 JavaのSerializableというインターフェースは猛烈に便利なもので、 これに慣れてしまったら 「じゃあ、Cだとどうするんだ?」という疑問が出てきたときに大変である。 ファイルに保存する場合だけではなく、 共有メモリ上にデータを配置しておいて複数のアプリケーションから参照するにはどうするかとか、 それを保存・復元したり上書きするにはどうするか、

 

※ ポインタの指している先も保存するのである。

というような問題をC言語の範囲内で解決するのは、基本的に大変面倒なものだから、 既存のライブラリを使うという発想が自然に出てくる。 ただ、それを探すのと、自分で作るのと、どちらがよいか判断が難しいことがある。 基本的には、「同じものを発明しない」が大原則なのだが、 発明を避けるためにはまず存在を知らなければいけないのである。 また、目的の機能を果たすライブラリが見つかったとして、 使うためのスタディにどの程度の期間が必要だとか、 機能が十分で信頼性も完璧かどうかとか、 細かい問題は多々発生するものである。 だったら最初から作った方がトータルコストとしては得だ、 という可能性もないわけではない。

結局、あるアプローチにメリットもあればデメリットもある、 というケースが大半なのである。 どこで見切るかが勝負の分かれ目で、それを見誤ると、 まさにファイナルになってしまうのでご用心。

  

(C MAGAZINE 2001年12月号掲載)
内容は雑誌に掲載されたものと異なることがあります。

修正情報:
2006-03-03 裏ページに転載。

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