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フィンローダのあっぱれご意見番 第146回「とりあえず」

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特許権や著作権の問題は相変わらず盛り上がっているようだ。 アジアからの邦楽CDの逆輸入防止という話が、 いつの間にか洋楽も含む全ての輸入版を規制できる条文にすり変わって、 そのまま著作権法改正案が国会で可決されてしまったり、 GIF の特許がやっと切れると思ったら JPEG の特許に関するライセンス料を払えという話が今頃出てきて、 GIF の次は JPEG が勝手に使えなくなるという噂があったりして、 次から次へとエンドユーザーがおろおろするような話が出てきて、 目が離せない今日この頃である。 もっとも、JPEG の特許は以前にも話題になっていたはずで (C Magazine 2002年9月号)、 今頃何でまた、という気もするが。

  

画像に関していえば、 その昔、GIF に関する特許への怒りも原動力になり、 これはもう GIF を使わないようにするしかない、 という流れもあって、 PNG というデータ形式を使いましょう、という運動もあったと思うのだが、 それにしてはいまいち普及しているのかしていないのか謎である。 最近の世の中の状況から妄想するなるば、 もし PNG が爆発的に普及したら、 どこかのメーカーが「PNG にはわが社の特許が使われている」 とか言い出すのではないかと、不安でしょうがない。

 

※ GIFに関する特許の問題は、 最初、ライセンスフリーで使っていいと言っていたものが、 いきなり方向転換してライセンスを取ると言い出したあたりから話がおかしくなった。 そもそも、そのアルゴリズムに特許を与えられるほど新規性があるのか、 というような話もあった。 しかし、円周率が特許になるような国なわけで…。

PNG がなぜ普及しないのか考えてみると、 もちろん、最近のブラウザは当然のごとく PNG にも対応しているはず、 とかいうわざとらしい話になってしまうのだが、 そういえば最近どうも IE でないとアクセスできないページが増えたような気がするのは困ったものだ。 というか、実際、困っている。 どうしても見ないといけないようなページもあるので。

 

※ PNGが普及していないと言うほど使われていないかというと、そうでもない。 IE でないとアクセスできないというのは、 IE独自のタグやJavaScript を使っていたり、 それ以前に、サーバーがブラウザを判定してページを表示しなかったり、という感じ。

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そういえばマイクロソフトが、 FAT の特許だとか、 押し方に応じて複数のアプリケーションを起動できるボタンの特許だとか、 どのあたりに 新規性があるのかよく分からない技術を対象にした特許戦略に出ているようだ。 FAT の特許というのは本当に意味が分からないのでパスするが、 ボタンの特許というのは、 ボタンをダブルクリックしたり、長く押した状態にし続けることで、 普通にクリックした時とは別のアプリケーションを起動する、 といった感じの内容らしい。 まさかダブルクリックや長時間押している状態をハードウェアが検出して違う信号を出す、 なんて話ではなさそうだし、 そういえば円周率が特許になっているという笑い話もある位だから、 さすがはアメリカという感じがしないでもないが。

  

ボタンを一定時間押した状態にしないとパワースイッチが動作しないpcは、 十数年前に既にあった。 PSXのように、 電源ボタンを長時間押したままにすることで、強制終了の動作をする機器は、 割とあるのではないかと思う。 私の使っている携帯電話の「切」ボタンは、 普通に押すと電話を切る操作だが、 一定時間押したままにすると、電源をオフすることができる。 つまり、 押す時間によって2つの機能を使い分けるというだけなら、 これは既に広く応用されている技術なのだが、 では、 ボタンを普通に押したときと、 長く押し続けたときで、 違うアプリケーションが起動するようなUIはあっただろうか、 と考えてみると、 そう言われてみたら、どうも個人的には何も思いつかないのだ。 まあ自分が知らないだけかもしれないが。 アプリケーションではないかもしれないが、 ボタンを長く押したら違う技が出る、 というゲームならいくつかあったような気がする。

 

※ PSX: ソニーのHDDビデオレコーダー。PlayStation2のゲームを実行できる。

シングルクリックとダブルクリックに違う機能を割り当てるというのは、 編集時の選択範囲が変化するというのが Xerox の Star の時代からの仕様だから、 何十年も前からそういう機能になっているわけだが、 では、 シングルクリックとダブルクリックで違うアプリケーションが立ち上がるようなUIはあったかいな、 か考えてみると、 これが記憶にない。

 

※ Star: 元祖ワークステーション。 Wysiwyg (What you see is what you get) を実現するためにビットマップディスプレイを搭載。マウスでGUIを操作するという、 現在のデスクトップ系のUIのルーツがそこにある。

もっとも、そのようなUIがないというのはある意味当然なのだ。 ダブルクリックしたつもりなのに、 システムがシングルクリック2回だと判定してしまった、 という経験のある方は多いだろう。 シングルクリックとダブルクリックとか、押した時間で切り分けるとか、 そのような仕様にすると、 誤操作が発生しやすくなる。

一定時間押し続けたときに特別扱いするUIに関しては、 ボタンを離さなくても、 一定時間が経過した時点でその特別なアプリケーションを起動する、 という設計が考えられる。 ユーザーは、 そのアプリケーションが起動したことを確認してから手を離すことで、 視覚的なフィードバックを得ることができる。 これで誤操作を少なくしようというのである。 ただし、そのような仕様にしたところで、 うっかりボタンを早く離してしまうという誤操作は避けられない。 この場合、起動したくないアプリケーションが動き出してしまう。 ダブルクリックで分ける場合は、もっと深刻だ。 2回クリックしてした時点で、 システムがそれをダブルクリックと解釈するのか、 それとも2回のクリックと解釈するのか、 実際に何か起こるのを待つまで分からないからだ。 もっとも、起動前に確認するような処理を入れておけば、 操作性は少し犠牲になるが、誤操作のキャンセルができないわけではない。

要するに、この種のUIを実装する場合は、 誤操作の結果があまり問題にならないように、 全体のデザインを設計する必要があるわけで、 それが結構難しい問題なのである。 誤操作をどうやって避けるかと工夫するよりは、 別のボタンを押してもらった方が現実的だったりすることもあるだろう。

どうせタイミングで機能を分岐させるのなら、 キャンセル技(?)を使えば裏アプリケーションが起動するとか、 コンボ技で複数のアプリケーションが連携して動作するとか、 そういう機能まで実装するのなら、 特許というのも分かるような気がする。 奥義を体得しないと使えないアプリケーションというのは、 マニアには受けるかもしれない。 とはいっても、ある意味、どんなアプリケーションにも奥義はあるような気もするが。

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最近、個人的に注目しているのは Xoops である。 Fedora JP Project のオフィシャルサイトが Xoops で構築されているのに気付いてから、 何かすごく気になっていた。

 

※ Fedora: Linux のディストリビューションの一つで、RedHat から派生したもの。 無償でダウンロードして派手に使える。 Core がどんどんバージョンアップしていくのが面白い。

以前から、 この種のソフトには何となく興味があった。 この種って何だと言われると困るのだが、 一般には多分、 Xoops は、 コンテンツマネージメントシステム (CMS) の一種だということになっている。 ただ、CMS とは一体何なのかというのが、 いまいちハッキリとしないのだ。 個人的には、 Webサイトのコンテンツマネージメントには以前から興味があって、 自分のサイトでは自作の割といいかげんなソフトで管理していたりするが、 とりあえず Web という条件を付けると、 コンテンツの履歴管理機能が必須だと思っているのだが、 そういう意味では Xoops はちょっと違うのかもしれない。

  

Xoops って具体的に何かだというと、 自分としては、PHP で書かれたサーバーサイドのWebアプリケーションの一種、 だと思っている。 5分でインストールできるという話が有名だ。 本当に5分で出来るのかと思って、 実際にやってみたのだが、 Xoops をインストールする前に、PHPとMySQL をインストールするのに 3時間もかかってしまった。 おまけに、日本語版をFedora にインストールしようとしたら、 どうも apache の default charset が UTF-8 だったのが災いしたらしく、 インストール画面が文字化けして訳が分からない。 これをいちいちブラウザのメニューを出して文字コードを EUC に再指定しながらインストールしたら、15分程度かかってしまった。 文字化けしなければ、 インストールが5分で済むというのは、 割といい感じではないかと思う。

 

※ Xoops も頻繁にバージョンが上がるので、 多分、多くの問題が現時点では解消していると思う。 紹介した文字化けの話は、 インストール時に使うページの一部が、 charset を指定しないで出て行くために化けるという話。 apache の default を EUC にしても解決するのだが、本質的ではない。

最近の求人広告を見ると、 必要なスキルに PHP と出ていたりするので、 PHP を使ったアプリケーションの需要も結構あることが分かる。 これを書いている時点では、 バージョン5の Release Candidate 3 が出ているという状況で、 PHP 自体が発展途上中の言語でもあり、 これからどうなのかなと思ったりするのだが、 とにかく PHP を使ったサイトは増え続けているようだ。 発展途上中の言語といえば Java なんてのはその親玉みたいなものだが、 Java を使っているサイトというのは、 パスの途中に servlet という文字列があってバレたりしない限り、 パッと見て分かりにくい。 それに比べて PHP を使ったサイトは URL が .php で終わっていたりするので分かりやすいというか、それで余計に目立っているのかもしれない。

では PHP で作られている Xoops はこれからどうなのだ、 とか気にし始めたらキリがないのだと思うが、 個人的に Xoops のどこが面白いかというと、 モジュールという発想で各種の処理を実装するというアプローチである。 それって別に珍しい発想でも何でもないのでは、 とか言われそうだが、 Xoops の場合、気軽にモジュールが作れるというのが特徴の一つで、 その気軽さが他のシステムと比べると物凄く気軽というか、 むしろあまりに気軽に作れすぎるのでヤバいという感じもするのだが、 アドオンで機能を充実させるという使い方をすれば、 Xoops 自体を一種の支援ツールのような位置付けで考えるのもアリかな、 と思ったりするわけだ。

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プログラムを作る上では、 設計から念入りに検討して最後に実際に作る手法もあるが、 考えているだけで結局終わってしまうのでは面白くないというのも確かだし、 とりあえずやってみる、というのは結構重要なことなのかもしれない。

参考サイト

http://www.php.gr.jp/ 日本PHPユーザ会。
http://fedora.jp/ Fedora JP Project Official Site
http://jp.xoops.org/ XOOPS 日本公式サイト。

  

(C MAGAZINE 2004年8月号掲載)
内容は雑誌に掲載されたものと異なることがあります。

修正情報:
2006-03-01 裏ページに転載。

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