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フィンローダのあっぱれご意見番 第164回「メールでお知らせ」

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夏頃、携帯電話が唐突に壊れた。 通話ができないという、まさに壊れた状態なのだが、 前の機種もかなり使い込んでいるし、 機種変更した方がコスト的にも時間的にもいいだろう、 ということで、 結局、新しいものを買うことにした。

私は携帯電話ユーザーとしては、殆ど使わない方だと思う。 いつも基本料金で使えるどころか、 最近は2か月分繰越のような料金制度があるが、 2か月前のが使い切れずに余る、というような状態だ。 考えてみると、それって料金プランの選択を間違っているのだろう。

ただし、全く使わないわけではない。 実際、メールは殆ど毎日使っている。 その文面が「今から行く」「帰る」みたいな短文なので、 殆ど料金が発生しないのだ。

  

今まで使っていたのは DoCoMo の携帯。 iアプリ非対応の機種である。 対応エリアの都合で DoCoMo しか選択の余地がなかった。 昔は DoPa というパケット通信機能を使ったこともあったが、 もう使わないということで解約している。 新しい機種は FOMA になった。 FOMA はデビューした最初、通信速度が速いというのがウリだったと思うのだが、 結局、まだ一度もパソコンのデータ通信には使っていない。 私の行動範囲はたいてい無線LANスポットがあるし、 そうでない所だと、Air Edge の定額料金で接続するからだ。

 

※ Air Edge はかなりの時間使っている。

ということで、FOMA の新機能の出番がないのである。 利用状況は殆ど変わらない。 短文のメール送信が大部分である。 メールの文字数制限が緩くなっているから、 原理的には、長い文章のメールを書くことが可能で、 実際、たまにブログに投稿したりするようになった。 ただ、私の場合、普段からパソコン持ち歩いているので、 何かあったらまずパソコンを使えばいい、 ということで携帯電話の出番がないのだ。 無線LANスポットは、 まだまだ普及したと言うには程遠いのが実情だと思うが、 東京23区内に限れば、 そこそこ無線LAN のスポットがあって、 まさにモバイルな世界になっている。

§

  

携帯電話のメールには、殆どリアルタイムに連絡できるというメリットがあり、 これが重要なのである。 ということで、それに関連する重要な機能の一つが「着メロ」だ。

 

※ メールが来た瞬間に気づく必要があるのだ。

昔の機種だと、MIDI 的なデータを取り込んで再生するという仕組みだったが、 今の機種は音楽のデジタル情報をそのまま取り込んで再生できるようになった。 扱えるメモリの量、処理速度、消費電力など、 性能が格段に向上しつつあるのだ。 最近は音楽をそのまま着信音にできる機種も珍しくない、 というか普通だ。

ところが、その普通というのが普通じゃないのである。

私の場合、どうせ殆どメールも来ないし通話もしないし。 着信音も購入時のままだったが、 ふと思い立って、 着信音を設定してみることにした。 ところが、これがなかなか難しかったのだ。

やりたいことは簡単で、 自分で作った曲を着信音にしたい。 それだけである。 あるいは手持ちのCDの曲とか。

  

著作権について一言触れておく。 自分が買ったCDの曲は、 カセットテープにダビングしてもいいし、 パソコンに取り込もうかが、MP3プレイヤーに取り込んで聴こうが、 全然問題ない。 著作権法上は、 著作物を個人が私的に使うのであれば、権利者の許可なくコピーしても構わないことになっているからだ。 実際、ダビング機能のついた製品が普通に販売されているわけで、 これはまあ常識である。

 

※ 著作権法第三十条に 「著作権の目的となつている著作物は、 個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製するときを除き、 その使用する者が複製することができる。」と定められている。

もちろん、着メロサイトからデータをダウンロードして設定するのは、 そう難しい手順ではない。 経験者として言わせていただくと、まあ簡単とは言いませんが、 とりあえずできる。 トップメニューから着メロサイトまでは勘でたどり着けるし、 ダウンロードしたデータを着信音に設定するのも、 とにかく「機能」というボタンを押してみれば何とかなった。

では、自分で録音した信音を携帯電話に取り込むにはどうすればいいか? 家電的発想で、常識的に想像してみると、 CD プレーヤーなどの装置から LINE 出力経由で携帯電話に接続して、 着メロ設定のボタンを押す、 てな感じ?

しかし、携帯電話にLINE IN という受け口はないし、 着メロ設定ボタンなどはない。 もちろん、どこかのメニューに「着信音設定」という項目はあるのだが。 もちろん、携帯電話は電話機だから音声を入力することができるはずだ。 ということは、留守番電話の応答録音をするように、 その場で喋った声が着信音になる、という機能があれば、 目の前で着信音にしたい曲を再生すればいいだけのはずだが、 この機能もどうも見当たらない。 いや、実はあるのだが知らないだけかもしれない。

私は PSP で音楽を聴くことが稀にある。 この音楽は、メモリカードに保存してあって、 PSP でそれを使ってデータを処理するという仕組みだ。 私が使っている携帯電話にも メモリカードは入っている。 ここにデータをコピーすれば着メロとして使えるのではないか? 実際にやってみた。 メモリカードに保存した音楽を再生することができたのだ。 ところが、 この音楽データは再生できるのだが、 着信音には設定できないようになっている。 なんで?

  

さっき著作権の話を書いたのだが、 もしかしたら、私的にコピーして再生するのはよくても、 着信音にするのは違法なんですか? そんな訳があるかと思うけど、 法解釈というのはプログラマーの計り知れない世界にあるから、 まさかということがあるのかもしれない。

 

※ 著作権法の「私的使用」は「私的」であることを条件としている。 私的であれば、用途は制限していないはずなのだが…。

実際、着信音は、有料の着メロサイトとかに行けば、 いくらでもダウンロードできるから、技術的な問題があるわけではない。 要するに、多分これは単に商業的な話なのである。

では、現実問題として、 自分で作ったデータを着信音にすることは不可能なのか。 いや、できるのである。 かなり手順がややこしかったが、実際にやってみた。 そのややこしい手順を簡単に紹介すると、 着信音にしたいデータを WAVE 形式で作成し、 それを 3gp という形式に変換して、 自分だけアクセスできるサイトに配置し、 携帯電話でダウンロードしたのだ。 結局パケット通信料がかかってしまうというところが、 世の中よくできていると思った。

これを実際にやろうとすると、大きく分けて3つの作業が発生することになる。
1. ターゲットのデータを WAVE に変換する作業、
2. WAVE を 3gp に変換する作業、
3. 自分だけアクセスできるサイトを用意する作業、
ということで、 どれをとっても携帯電話だけでは作業不可能で、 素人がボタン一つでオッケーというような簡単なものではない。 そんな苦労するなら、 着メロサイトから気に入った曲をダウンロードして使った方が絶対に簡単である。

特に問題になりそうなのは3.の、「自分だけがアクセスできるサイト」だ。 要するに、ここが著作権の問題になる。 オリジナル曲を自分のサイトに置いても何の問題もないのだが、 他者に著作権がある音楽を、 誰でもアクセスできるサイトに勝手に配置するとヤバい。 自分以外の誰かに使わせるのは「私的使用」の範囲を超えてしまうのである。 つまり、著作権法に違反するおそれがあるのだ。 ちなみに、 サイトにデータを置くという行為は、 多分、有線送信権(著作権法第二十三条)の問題になるのではないかと思うのだ。 携帯電話って無線じゃないの?、 とかいう疑問がふとわいてきたりするが、 まあ細かい話はやめよう。

もしかすると、このような作業は、 携帯電話用ソフトを買えば一発で解決する話なのかもしれないが、 そのためのソフトがさらに必要というあたりで、 どうも納得できないものがある。

§

携帯電話といえば、やはりメールだろう。 メールを使うという作業は、 ユーザーインターフェースの視点からいえば極限まで単純化されているが、 実際にメールを送る内部の処理はかなり複雑である。 基本は SMTP というプロトコルに対応するということなのだが、 それを一から作るのはまあ大変な話だ。 幸い、そのような必須の機能は既にライブラリとして実装されたものがあるはずで、 今時のプログラミング環境なら、 何も考えなくてもメールを送る処理は書けてしまう。

  

Java の場合、JavaMail という API があって、 それを使えばかなり複雑な手順も、 用意された機能の組み合わせで実現することができる。 特にメールの受け取りのときの添付ファイルの扱いとか、 送信時に POP サーバに認証のための情報を送信するとか、 その種のややこしいところは出来合いの処理がやってくれるので助かる。

 

※ 初期の JavaMail は、 必要な機能がちょっと足りなかったりしたので、 実際に使うにはちょっと苦労したりしたが、 最近のバージョンを使えばかなりイケる。

Java で pop before SMTP の手順を使ってメールを送信するための処理の一部を紹介する。 setter、getter は想像すればだいたい当たると思うので説明していないが、 簡単という割に結構書かせるじゃないか、 と言われたらその通りですねぇ、 私もそう思う。 もっと何か、メールとしてのテキストみたいなのを String で与えたら一発で送信してくれるような、 そういう処理があってもいいのだが、 それは一段上のレイヤーの話になるのだろう。

  
---- List 1 Pop before SMTP 手順でメールを送信する処理 (java) ----

import javax.mail.Message;
import javax.mail.Session;
import javax.mail.Transport;
import javax.mail.internet.InternetAddress;
import javax.mail.internet.MimeMessage;

    ~(略)~

    Properties props = System.getProperties();
    props.put("mail.smtp.host", getHost());
    props.put("mail.smtp.auth", "true"); // Pop before SMTP

    Session session = Session.getDefaultInstance(props, null);

    MimeMessage message = new MimeMessage(session);

    try {
        message.setFrom(new InternetAddress(from));
        setRecipient(message);
        message.setSubject(getSubject());
        message.setText(getBody(), "iso-2022-jp"); // Japanese

        message.saveChanges();
        Transport transport = session.getTransport("smtp");
        transport.connect(getHost(), getUsername(), getPassword());
        transport.sendMessage(message, message.getAllRecipients());
        transport.close();
    }
        ~(略)~

---- List end ----
 

※ 以前は Javamail は apop に対応していなかったのだが、 現在のバージョンだと対応している。 mail.pop3.apap.enable という名前のプロパティを true に設定すればよい。

§

  

さて、着信音を設定したのはいいが、 予想通り、誰からも電話がかかってこない。 自分でかけるのもアレだから放置してあるが、 そろそろこの原稿出さないと、 編集部から催促の電話がかかってくるかもしれない。 いや、それで遅くなったというわけではないです、申し訳ありません。

 

※ 2006年3月までに、一度だけ着信音を聞いたことがある。

(C MAGAZINE 2006年2月号掲載)
内容は雑誌に掲載されたものと異なることがあります。

修正情報:
2006-03-11 裏ページに転載。

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